過去の医学的質問Q&A
以前に先生方からいただいた医学的質問を共有させていいただきます。
「ご質問」につきましては、点滴療法研究会マスターズクラブ副会長 / 鎌倉元氣クリニック院長の松村浩道先生にご協力をいただきました。ご自身の豊富な臨床経験をもとに、日々現場で寄せられるご質問に対して、わかりやすく丁寧にご回答いただいております。
3大点滴療法(高濃度ビタミンC/マイヤーズカクテル/グルタチオンについて
Q. 医薬品卸からビタメジンが入手出来ないという報告がありました。
なにか代替になる医薬品はありますか。
A.
ビタメジンの代わりとしては、例えばネオラミンスリービーという製剤が比較的入手しやすいようです。各製剤の組成は以下の通りです。
ビタメジン
B1:100mg B6:100mg B12:1mg
ネオラミンスリービー
B1:50mg B6:100mg B12:1mg
この B1 の差分を補う意味で「フルスルチアミン静注 50mg」や「ビタミン B1 注 10mg」といった製剤があるので、適宜これらを追加するとよろしいかと存じます。
(2025年質問)
Q. グルタチオン点滴を定期的にされている癌既往歴のある方が、がんに対して抑制作用と誘発効果があるとニュースにあったということでご心配されています。
なにか代替になる医薬品はありますか。
A.
ニュースではどのような内容で取り上げられたか存じませんが、近年グルタチオンががんの進行を促進したり、治療抵抗性を高めたりしてしまう可能性が示唆されるようになってきました。
具体的には、腫瘍細胞においては Nrf2 が活性化しグルタチオン濃度が高く維持され、それが治療抵抗性に関与していることがわかっています。
一方で、グルタチオンシステムを理解し、グルタチオンを枯渇させるような取り組みが治療効果を高める可能性についても、研究が進んでいます。
以上により、がん患者さんに対するグルタチオンの使用には警鐘を鳴らす文献もあり、私もリスクを上回るベネフィットが明らかでない限り、原則的にがん患者さんにはグルタチオンを使用しないようにしています。
当会ボードメンバーの澤登先生も同意見でした。
詳しくは、本年 1 月 26 日に開催した「点滴療法研究会新春フォーラム 2025」において「グルタチオンアップデート~グルタチオンをめぐる最新事情~」としてお話ししましたので、よろしければバックナンバー動画等でご確認頂けますと幸いです。
(2025年質問)
Q. 授乳中の患者さんにビタミン C 点滴やグルタチオン点滴は可能でしょうか?子どもへの影響はないかどうか教えてください。
A.
まずビタミン C 点滴についてですが、文献①の「効能・効果」として、[2. ビタミンCの需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給(消耗性疾患、妊産婦、授乳婦、はげしい肉体労働時等)] と謳っているくらいですから、少なくとも2g程度のVCは授乳中でも全く問題なく使用できると考えます。
一方で、高用量のビタミン C、特にがん治療を目的とした高濃度ビタミン C の臨床研究では、もともと妊婦や授乳婦を除外して実施していることもあり、安全性についての十分なデータがないのが実情です。
私個人としては 25g 程度のビタミン C 点滴は問題ないと考えていますが、より慎重な考え方をするドクターは、何かあった際の責任を考慮してのことか、妊娠中や授乳中の方への実施を控えているようです。
次にグルタチオン点滴について、一部クリニックのウェブサイトでは「授乳中の方はグルタチオン点滴を受けられません」と謳っているようです。
文献2には、「VIII. 安全性(使用上の注意等)に関する項目」6.(6) 授乳婦において、「治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること」とありますので、授乳中の方へのグルタチオン投与が必ずしも禁忌ではないことが伺えます。
また文献②を参照すると乳汁への移行性についてはデータがないようですが、私個人としては、元々妊娠悪阻に使用される薬剤でもあることから臨床上あまり問題にはならないと考えています。
いずれについても、最終的なご判断は先生ご自身でなさってください。
(2025年質問)
Q. マイヤーズカクテルなどではプロトコル上Mgの投与量が多く設定されています。
高齢者において酸化マグネシウムによる高Mg血症なども臨床では見かけますが、実際の点滴療法においては、事前に採血を行うのは時間とコストもかかるため、あまり一般的ではないのでしょうか?
またMgのさじ加減などありましたら教えください。
A.
点滴療法で Mg を使用する場合は、腎機能、血清 Mg 値などを把握してから投与量を決めるのが理想的です。
当院では、オーソモレキュラー医学的な栄養解析の目的も含めて初診時に一通りの血液検査を実施することが多いですが、美容やアンチエイジングを目的に来院した若く健康な方では省略することもあります。
腎機能に応じたマグネシウム投与量について、まず文献1(ラインマーカー部分)では「腎不全で GFR が 30mL/min になるまでは Mg バランスは保たれる」としています。
一方、資料②ではクレアチニンクリアランスを指標としており、「CCr が 30mL/min 未満に低下すると、代償メカニズムが不十分になる」「CCr が 10mL/min 未満の患者では、高マグネシウム血症が頻繁に発生する」とあります。
一般的に、推算 CCr も実測 CCr も GFR より高値(それぞれの CCr は、0.789 倍、0.715 倍しGFR として評価)になりますので、資料1とほぼ同様に考えて良いと思います。
ただし、これらを根拠として GFR35mL/min の患者様に、健常者と同量の硫酸マグネシウムを使用する、というのはさすがに乱暴かと思われます。
私は大まかに以下のように考えておりますので、参考にしていただけますと幸いです。(あくまでも推論ですので、安全性を保障できるわけではないことはどうぞご容赦下さい。)
FR>90:Mg は通常通り使用可
90>GFR>60:10ml~15ml
60>GFR>45:5ml~10ml
45>GFR>30:1~5ml
GFR<30:使用しない(あるいは慎重に少量使用)
以上は、血清マグネシウムが基準値内の場合で、当然ですが高マグネシウム血症が存在する場合は、より慎重に投与量を設定する必要があります。
また資料2においては、透析後の血清マグネシウム値は、透析液マグネシウム濃度に依存することが示されています。
透析中の患者様については、主治医と透析液マグネシウム濃度に関して情報共有するのがベターかと思います。
(2025年質問)
その他
Q. 30 代男性で高尿酸血症治療薬を内服中です。しかし、数種類の高尿酸血症治療薬を内服しても尿酸値が下がらず、内科の先生も治療に苦慮しています。点滴療法的に尿酸値を下げる治療法がありますか。
A.
尿酸は生体内での代表的な抗酸化物質として機能することから、酸化ストレスマーカーとも考えられています。(PMID: 16375736)
一方近年では、尿酸自体が活性酸素を産生し酸化促進的に作用することもわかってきました。(PMID: 33795813)
酸化ストレスを軽減するアプローチ、例えば抗酸化物質の投与が尿酸値を低下させることについては、まずビタミン C に関して一定のエビデンスがあります。
ただし、いずれの研究も経口摂取であり、IVC ではありません。(PMID: 15934094、PMID:21671418)
次に動物実験にはなりますが、ラット高尿酸モデルに経口α-リポ酸(10‒90mg/kg)を 2 週間投与し、UA・BUN・クレアチニンなどが有意に低下、抗酸化酵素活性が増加したことを確認した研究があります。(PMID: 31845223)
以上より、点滴療法としてはこれらを単独あるいは組み合わせて実施することで良い結果が期待できる可能性がありますが、点滴の場合にはどうしても治療頻度が少なくなってしまうため、毎日の経口摂取をベースとして、時々点滴でカバーすると良いと思います。
(2025年質問)
Q. 血管痛をおさえるために、硫酸マグネシウムとメイロンを混注する場合、どれくらいの容量を入れるべきでしょうか。
A.
血管痛に対しては、炭酸水素ナトリウムを用いなくても、硫酸マグネシウムの添加や刺入部位を温めるなどで対処可能なことがほとんどです。
血管痛の対処方法は、以下をご検討ください。
(1) 点滴速度を遅くする
(2) 硫酸マグネシウムを増量する
(3) 局所を温める
(4) 体位を変える
(5) メイロンを5~15ml 添加する
当院では、50g 以上のビタミン C 点滴を行う場合、腎機能に問題がない症例では予めマグネシウムを 10mL 添加することが多く、それでも血管痛がある場合は局所を温めることでほぼ対処可能です。
さらにマグネシウムを増量する場合、トータルでの使用量が 20mL を超えないよう、具体的には追加量としては 5~10mL で実施なさると良いと思います。
ちなみに当院では、血管痛のために炭酸水素ナトリウムを添加するケースはほとんどありません。
(2025年質問)

